ナイフ1本で創る!美しきカービングの世界 竹田ひろ美さん vol.1

鹿児島市郡元にあるコミュニティーカフェ「芸術と癒しの森。尊mikoto」には心癒やされるアート作品が数多く並べられていますが、先日吸い込まれるように見入ったのが「ソープカービング」。

その名の通り、石けんをナイフで彫り上げたアートで、巧みな技術にうっとり!

すると店主の小牟田美和子さん曰く、「アーティストの竹田さんってカービングの技術も素晴らしいんですが、野望も大きいんですよ」

そう聞いて「こんなに美しく繊細なアートを創る人が野望?」と興味がむくむく膨らみ始めた私。野望の訳を知りたくなって、霧島市国分新町のサロンを訪ねてみました。

意外な一言に驚き!

カービングアーティストの竹田さん

溢れんばかりの笑顔で迎えてくれたのは、カービングアーティストの竹田ひろ美さん。一瞬で会った人の心を和ませる、柔らかな雰囲気が印象的です。

「でも、繊細なカービングの世界と竹田さんのイメージが少し違ったんですけど」と伝えると…。

「だって私、元々ものすご〜く不器用なんです。リボン結びもまともにできないし、高校時代、家庭科で浴衣を作らなきゃいけない時なんか、業者に頼んだほど。しかも絵心もないんですよ」

意外な一言にびっくり!

実は私も超がつくほど不器用で高校時代、家庭科の課題だったパジャマづくりを途中で断念したほど。共通点を見つけられたことが何だかうれしくて、気になる「野望」の前に、まずは竹田さんがどうして高度な技術が求められるカービングの世界に引き込まれたのか、教えてもらうことにしました。

タイでの習い事のはずが…

カービングの様子

タイの宮廷で果物に装飾的な彫刻を施したのが始まりとされるカービング。ナイフ1本で彫りあげる、タイの伝統工芸です。もちろん、竹田さんもタイに家族で移り住んだことがカービングと出会うきっかけでした。

「主人の転勤で2013年から3年半家族でタイに住むことになったんですが、駐在員の妻は就労ビザで行っているわけではないので、働いちゃいけないんですね。夫は会社、2人の子どもも学校に行ってしまうと、何にもすることがないんです。じゃあ、習い事でもしようかということで、タイで知り合った日本人のお友達が『カービングを習いたい』と言うので、10回だけの初級コースなら…と仕方なく始めたんです」

やりたいと思った友達は器用なのですぐにできる。一方、竹田さんはちっともできず、最初はタイ人の先生に叱られてばかりだったそう。

「もう嫌で嫌でしょうがなかったんですが、10回だけは続けようと頑張りました。そしたら10回目が終わる頃、少しずつカービングの理屈が分かってきて『もう少し知りたい』と思ったんです。器用なお友達は満足して10回でやめちゃったのに、不器用な私が続けることになるなんて不思議ですよね」

「技術は努力」を自ら実践

タイでのカービング教室

こうしてカービングのスクールに毎日通い、家でもカービングに没頭する生活を2年続けた竹田さん。

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スイカのカービング作品。左が竹田さんの作品
竹田さんがパパイヤで作った作品。妖艶でキュート!

竹田さんがタイで作った作品を見せてもらうと、「不器用で絵心がなかった」という言葉が信じられないほど、伸びやかで表情豊か。そしてクオリティーの高さに目を見張ります。

「気づけば、無心で6時間彫り続けていることもザラでした。技術は努力です」と竹田さんが語る通り、きっと信じられないほどの時間と労力を費やし、コツコツと努力を続けた結果、高度な技術と個性豊かな絵心を習得されたのでしょうね。

帰国前にはカービングコンテストに出場し、見事、銀メダルを獲得。

「ある時、タイ人の先生に言われたんです。『あなたは不器用だけど、他の人に比べてものすごく苦労した分、教えることが得意になりますよ』って。確かにそうだなあと思って『鹿児島に帰ったら、カービングの魅力を多くの人に広めていきたい』と思ったんです」

カービングへの情熱覚めやらぬまま、2017年に帰国した竹田さん。

その後のカービングストーリーは、また次回お伝えします。