鹿児島県の北部中央に位置するさつま町。地元の農産物を生かした特産品加工が盛んで、多くの女性が加工品づくりに取り組んでいます。
そんな農産加工が活発なさつま町で「70代からドレッシングづくりを始めた、スーパーおばあちゃんがいるのよ」と聞き、ぜひお会いしたいと連絡をとったのは、久德(きゅうとく)スミ子さん。昭和12年10月生まれの82歳です。
「他にも頑張ってる先輩方がいっぱいいらっしゃるし、私なんて話すことなんてないのよ」
と当初、取材に対しては消極的。
でもどうにか取材の段取りを取り付けて自宅を訪ねてみると…。
「わざわざ雨の中、来てくれてありがとうね。さっ、こちらへどうぞ」とチャーミングな笑顔で出迎えてくれました。
案内されたのは、増設して新しくなった工房。
「せっかく増設するんだったら、住めるくらいの工房にしようと思ってエアコンもテレビも入れたの。これも農産加工で売り上げがあるからよね」
実は工房を訪ねたのは、九州各地の農産物加工に携わる人々が年1回集い、情報交換を行う「九州母ちゃんサミット」がさつま町で開催された直後。サミットでは、スミ子さんもパネリストの一人として登壇しました。
「司会の人が『スミちゃんは年金プラス加工品で得たお金を何に使いますか?』と聞くもんだから、『老後に使います』と言ったら、みんな大笑い。だって普通80代って老後でしょう」
やりとりはさらに続き…。
「そしたら今度は『スミちゃん、老後はいつからですか?』とつっこむもんだから『老後は動けなくなった時です』と言ったの。そしたらまた大笑い。みんなが笑ってくれて面白かったですよ」
ユーモアたっぷりの話に、初対面の私も大笑い。話が楽しすぎて、気づけば3時間も話し込んでいました。
人生100年時代のヒントもいっぱい。
まずはドレッシングの話から紹介します。
75歳からドレッシング作りに挑戦
スミ子さんが手にしているのは「さつま町の無添加ドレッシング」(1本540円)。
さつま町の農産加工業者数人でラベルもネーミングも統一して作るご当地ドレッシングで、スミ子さんはしいたけ味とにんじん味の2種類を作っています。
さっぱりした風味が特徴で、野菜をもっと食べたくなるドレッシングとして人気。地元の学校給食でも使われています。
元々、となり町からさつま町の農家に嫁ぎ、家族で椎茸や人参を中心に作ってきたスミ子さん。若い頃「手に職をつけた方がいい」と調理師の免許を取得していたこともあり、子育てと農業の傍ら、お餅や赤飯、あくまきなどを作り、農産物直売所などで販売を始めます。
注文を受けた範囲でできるものだけを作るー。
そんな生活を続けてきたスミ子さんに転機が訪れたのは75歳の時。
「さつま町で農産加工を学ぶ10日間のセミナーがある」と聞いて出かけたのがきっかけでした。
「70代だったけど、新しいことに挑戦したかったの。そしてセミナーで学んだ後は『ご当地ドレッシングを作れる人は作りましょう』ということになって、せっかくだったら自分の家で作ってる椎茸とニンジンを使ったドレッシングを作りたいと思って、迷わず手を挙げました」
年齢に臆することなく、ドレッシングづくりに手を挙げたスミ子さん。
果たして、その後どんな道を歩むことになったのでしょう?
続きはまた次回!