タイで3年半暮らす中でカービングの奥深さに魅了され、カービングスクールに毎日通い続けた竹田ひろ美さん。
今回は2017年に帰国後、鹿児島でのカービングストーリーです。
前回のストーリーはこちらをチェック
⇨ ナイフ1本で創る!美しきカービングの世界
自分の不器用さに何度も悔し涙を流しながらカービングの技を磨いてきただけに、「できない人の気持ちが分かる」のが竹田さんの強み。
タイの伝統工芸「カービング」は鹿児島では馴染みのないアートでしたが、分かりやすい指導が評判となり、霧島市の自宅サロンには県内各地からカービングを学びたい人々が訪れます。
最近では、女子高校生など10代の受講生も増えているそうで、「彼女たちの才能がすごいんです。一生懸命練習して才能を開花させていく姿を見ると、私ももっと技術を磨いて難しい技を彼女たちに教えてあげたい、と励みになります」と目を細めます。
遊び心が溢れるあまり…
そして、今年挑戦したのは、下の作品。
これ、何を素材に彫ったのか、分かります?
正解は「羊羹」。
元々、タイのカービングは果物や野菜を彫り、食べられる彫刻が基本ですが、どうして羊羹だったのでしょう?
「石けんを彫っていると石けんカスが出るじゃないですか。『これが食べられたらカスが出ないのにね』と話したことがあって、『じゃあ、カスも全部食べられる羊羹ならいいかも!』と霧島市のカフェで羊羹を彫って抹茶を飲むというイベントをしたんです。そしたら、その話が東京の出版社の目に止まって『羊羹を彫ってくれませんか』という依頼につながったんです」
というわけで、小豆色の羊羹と白い羊羹を彫り、繊細な細工を施しながら4時間かけてこの作品を完成させたのだそう。
まさに日本とタイの文化の融合。しかも削った部分もおいしく食べられるなんて、遊び心溢れる竹田さんならではのアイデアです。
野望はピクルス事業 !?
鹿児島で活動を始めて3年。この夏、竹田さんはカービングの新たな可能性を広げるため、ピクルス事業に取り組んでいます。
「ホテルのシェフの方々にカービングを教えた時、『導入したいけれど手間がかかるので、できればカービングされて酢漬けになった商品を購入したい』という声が多かったんです。そこで就労支援施設で野菜をカービングし、酢漬けにして売り出せれば、新たな雇用にもつながると考えました」
「野望なのかどうかは分からないですが、アートとしてのカービングだけではなく、日本の生活に根差したカービングを広めていきたいと思っています。基本は面白そうなことが大好きなので、自分にできることを楽しくやっていきたいですね」
2時間のインタビューの間、笑顔の奥から次々にアイデアが飛び出す竹田さんの話に、こちらまでわくわく楽しい気分を味わえました。
しかも、今まで「不器用」という言葉を言い訳にアートの世界には近づけなかった私ですが、もしかするとこんな私でも楽しめる余地があるのかも…。そんな希望まで膨らんで新発見!
できることなら、まずは「羊羹カービング」から挑戦してみたいと思います。