グルテンフリーカフェ「なちゅらるーちぇ」に込めた思い。福留淳子さん

昨年4月、鹿屋市古里町でカフェ「なちゅらるーちぇ」を始めた店主の福留淳子さんがこだわるのは、グルテンフリー。もちろん、手にしているスイーツもグルテンフリーです。

「グルテン」とは小麦粉に含まれるタンパク質が絡み合ってできたもの。そして「グルテンフリー」とはグルテンを含む食品、つまり小麦粉が使われている食品を口にしないということ。

小麦粉はパンや麺類、スイーツなど、さまざまな料理に使われていますが、福留さんはカフェで提供するメニューに小麦粉を使いません。しかも牛乳などの乳製品や白砂糖も使いません。

例えば、イチゴのタルト(1カット350円)の生地には小麦粉ではなく、米粉を使用。

こちらは看板メニューの「ダッチベイビーセット」1,100円。ダッチベイビーとはスキレットで焼いたパンケーキのことですが、パンケーキの生地には米粉と卵と豆乳を使用しています。

でも、そもそもなぜグルテンフリーにこだわったカフェを始めようと思ったのでしょうか。

子育て中に知ったグルテンフリー

「実は息子が小学校に上がる前、発達障害と診断されたんですが、何か息子のためにできることはないかな…と学ぶうちにグルテンフリーのことを知ったんです」

そう話す福留さんは、夫と中2の長女、小5の長男の4人家族。

4年前、大阪に発達障害の子どもを育てる母親たちの学びの場「発達凸凹(でこぼこ)アカデミー」があることを知り、大阪まで出かけて食事療法の講座を受講したのがきっかけだったそう。

「講座で小麦粉が脳の神経伝達や腸内環境になんらかの影響を与えること、そしてグルテンフリーの食生活を続けると発達障害の子どものイライラやかんしゃくが収まりやすいことを知りました。そこで、グルテンフリーのことをもっと勉強したくなって東京のスクールでグルテンフリーアドバイザーの資格も取得したんです」

いいと思ったらすぐ実践する行動力こそ、福留さんの強み。

でも「家族全員でグルテンフリー生活を2年間続けた」という話には驚きました。私も以前、夫の食事療法の一環で糖質制限に取り組んだことがあるんですが、食生活をがらりと変えるのはとにかく大変だったから。

「そうそう、私もパンやパスタが大好きだったので、最初は『食べるものがない!』と大変でした」と福留さん。

「それでも家族みんなでグルテンフリー生活を2年間続けました。そうしたら私は胃腸の調子がものすごくよくなり、主人は体重が減り、息子は先生たちから『少しずつ落ち着いてきたね』と言われるようになったんです」

裾野を広げるためのカフェ

グルテンフリーの良さを、自分と同じように子どもの発達障害で悩んでいるお母さんたちにも伝えたいー。

そのために始めたのがカフェでした。

「鹿児島でグルテンフリーの講座を始めることも考えたんですが、まずはグルテンフリーのことを多くの人に知ってもらうことが大切なのかなと思って。裾野を広げるためにもカフェがいいと思ったんです」

元々、独身時代、カフェを経営していたこともあった福留さん。平日はこれまで通り事務の仕事を続けながら、土曜日と日曜日の12時〜16時、4時間だけの週末カフェを始めました。

「40代の元気なうちに始めたくって動き出したんですが、週末にカフェをやると家族との時間が減ってしまいますよね。だから最初は家族に申し訳ないなと罪悪感がありました。でも、それまで全くお手伝いをしなかった子どもたちが二人で協力して家のことをやってくれるようになったんです。子どもたちが成長するためにもよかったのかなと思ってます」

同じ思いの人とつながる場に!

カフェの内装は夫とDIYで仕上げ、店内のテーブルや椅子は大工である父親の手作り。家族の協力で作られただけに、温かみのある空間が広がります。

そして窓の外には、錦江湾を一望できるテラス席!

最近ではグルテンフリーの噂を聞きつけ、遠方から足を運ぶ人もいるほど。「パンケーキもいいけど、ご飯も食べたい」というリクエストに応え、4月から第1・3週の週末は玄米ランチプレートを始めました。

写真提供:なちゅらるーちぇ

大豆ミート料理・野菜のキッシュ・スープ・玄米ご飯にデザート・ドリンク付きで1,300円。体に優しいグルテンフリーメニューです。

コロナ禍の中、週末カフェを一人で始めて早1年。

「大変だったけど、人に恵まれた一年でした」
何度もそう話す福留さんは、少しずつ手応えを感じ始めているそう。

「1年続けてきたおかげで『グルテンフリーっていいよね』と思ってくださる方たちとつながることができました。2年目は発達障害の子どもを持つお母さんたちが集まれるワークショップも計画していて、カフェとしてだけでなく、子育て中のお母さんたちが自由に活動できる場所になっていけるといいなと思います」

「なちゅらるーちぇ」という店名は、英語の「natural(ナチュラル)」とイタリア語で「光」を意味する「luce(ルーチェ)」を組み合わせた造語。

柔らかな光が差し込むカフェで、いつでも自然体の笑顔を見せる福留さんの小さな一歩が周りの人の心を動かし始めています。

【naturaluce なちゅらるーちぇ】
鹿屋市古里町
1086
☎︎080・6427・6202
open:土曜・日曜 12時〜16時
Instagram 
nachiyuraruchie