願い事をする時は「家族みんなが幸せに暮らせますようにー」。
日々の暮らしの中では「今日一日、自分のしたいことができて、なんて幸せなんだろう!」としみじみ思う日もあれば、「どうすれば、もっと幸せを感じて生きられるんだろう…」と欲張ったり…。
考えてみれば、私は一日に何度も「幸せ」という言葉を使い、「幸せを実感することが人生の意義」と言わんばかりに、幸せを実感したい欲求がものすごく強い気がします。
そんな私の幸せ感をガラリと覆してくれる一冊の本に出会いました。
「ストレス脳」(新潮新書)。
スウェーデンの精神科医で世界的なベストセラーとなった「スマホ脳」の著者であるアンデシュ・ハンセン氏の最新作です。
人類が誕生して以来、最も便利で豊かな暮らしをしているはずなのに、現代人の4人に1人がうつや不安に悩まされるのはなぜなのか。
ハンセン氏はその疑問を脳のメカニズムと人類の進化の観点から丁寧に解き明かしてくれます。
本書によれば、私たちの脳は1~2万年前、狩猟採集民だった頃と大きく変化していないのだか。
だから、当時も今も脳の最優先事項は「生き延びて子孫を残すこと」。
そのため、うつや不安は人間が生き延びるための防御メカニズムであり、脳にとっては私たちが精神的に安定し、幸せを感じて生きているかどうかなど全く問題ではない、とハンセン氏は語ります。
脳は何が起きるのかを予測し、危機に備えるために感情を生み出す。そして感情をつくり出すことで私たちの行動をコントロールし、生存率を上げようとしているだけなのだ、と。
そして、このフレーズが衝撃でした。
幸せになるために努力したいなら
重要なのは幸せを無視すること
幸せになりたいなら、幸せなんて気にせず、幸せを追い求めるのはやめたほうがいい。
脳は身体の情報に基づいて感情のあり方を変えていくのだから、常に幸せな感情を維持し、最高の気分でいられることなど、非現実的な話。そのため、「ずっと幸せに暮らせますように」と願ったところで、感情をつかさどる脳にとっては所詮無理な要求というわけです。
「他人を羨んだり、常に最高の気分でいようなどと考えず、自分の得意なこと、生きる意義があると感じられることに没頭すること。それこそが幸せの副産物」とハンセン氏は説いていきます。
脳のメカニズムを科学的に説明された上でそう言われると、そっか、幸せを感じているかどうかと一喜一憂するより、今日一日、目の前のやるべきことに集中して誰かのためになったと感じられるだけで満足すればいいんだ…と思えてくる気がします。
背伸びせず、過度な期待をせず、人とも比べず。
簡単に心のスイッチを切り替えることはできないけれど、まずは毎日の暮らしの中で「幸せ」というワードを使わないことから始めてみる。
「ストレス脳」は私のように幸せ願望が強すぎる人にオススメの一冊です。