前回に続き、87歳のスイマー・河野累子さんに聞く「人生100年時代の処世術」。
「私、もう平均寿命を超えたから、これからの人生は一日一日が丸もうけよね」
そう笑う累子さんですが、生きる上で目標としているのが、106歳まで生きた母親のユキノさん。
90代まで一人暮らしを続け、自分のことは自分ですることを信条としていたユキノさんを近くで見ていただけに、健康寿命を延ばすためにどうすればいいか、常に考えるようになったと言います。
自分でできることは自分でする
累子さんが、日常生活でまず心がけているのが「自分でできることは自分でする」。
「年をとると動くのがおっくうになり、誰かにしてもらう方が楽、と思うこともあるけど、自分でできることは自分でする、と常に言い聞かせてます。『新聞を読んだら元の場所に戻す』とか、小さな習慣の積み重ねでいいんです。理想は『自分に厳しく、人には優しく』よね」
毎日必ず体操の時間をつくる
続いて、毎日続けているのが夜寝る前の体操。
「どんな体操をするんですか?」と聞くと、すぐさま手にしたのは重さ1.5㎏のダンベル。
それをひょいっと軽々持ち上げます。
さらには「寝転がって体操もするのよ」と横になった途端、ひょいっと足を上げてこのポーズ。
うわぁ、とても87歳とは思えない身のこなし。さすがは週3回、1500m泳ぐ水泳選手の底力です。
「今日は疲れたからさぼろうかな、と思うこともあるけど、さぼると次の日、体の調子が良くないの。もちろん、年々体力は落ちるから自分の老いはちゃんと認めながら、自分にできる体操をコツコツ続けてます」
明日への希望を持って暮らす
そして、3つ目の心得が「明日への希望を持つ」。
「明日花を植えようとか、明日はあの人と話をしたいなとか、小さなことでいいから、明日への希望があれば生きる価値があると思ってるの。逆に言えば、明日への希望がなくなった時が人生のしまいどき」
そう話すと、「私、この言葉が大好きなの」と累子さんが一枚の紙を見せてくれました。
80歳の時に読んだ本の一節にあった言葉で、感銘を受けてしたためたのだそう。
「人生のたそがれ時を夕暮れにするのも夕映えにするのも、その人の生き方次第である。この言葉が80代からの私の生き方にぴったりだなと思って。たそがれ時だからこそ、どう生きるかが問われるし、夕映えになるように頑張ろうって気持ちになるのよね」
74歳まで編み物店を経営し、仕事一筋の生活を続けた後、80代の今、水泳を通して人生を輝かせている累子さん。
いろんな人から「87歳でそんなに元気だなんて羨ましい」と言われるそうですが、自分の老いを受け入れながら人一倍努力を重ね、しかも持ち前の好奇心で楽しく続けているからこそ、なんですよね。
「人生100年時代」と簡単に言うけれど、健康寿命を延ばすのは簡単なことではありません。
でも「案外、歳をとるのもいいものよ」と累子さんがにこにこしながら話すのを聞いて、ふうっと心が軽くなりました。
不安がるより、歳をとることを楽しむ。そしてほんの少し自分にハッパをかけ、明日への希望を心に灯していけば、累子さんのように笑顔の80代になるかもしれないんですから!
12月に行われる水泳大会は非公開での開催。
残念ながら観戦することはできませんが、会場の外からエールを送りたいと思います。