南さつま市大浦町の高台から撮影した写真の中に、ふわりと浮いているのは「浮遊がーる。」さん。
2016年から写真のどこかに自分が浮いている「浮遊写真」を撮り始め、「浮遊がーる。」としてインスタグラムを中心に発信しています。
(Instagram⇨floating_girl_japan)
写真の中の「浮遊がーる。」さんはいつも楽しそうで…
くすっと笑いたくなる写真が多いんです。
時には、ファンタジックな写真も!
こんな風に自分自身を被写体に撮影しているんですから、きっと表舞台で表現することが大好きな人に違いないー。
そう思って実際にお会いしてみると…。
意外なことに、誰かに写真を撮られるのも、カメラの前で作り笑いをしてピースをするのも大の苦手だというんです。
しかも「ひっそりと地味〜に活動しているので、プライベートなことは公開していない」とのこと。
そこで、インスタの写真をフル活用しながら「浮遊がーる。」(以下、浮遊がーる)さんの浮遊への思いを紐解いてみようと思います。
5年前、一枚の写真に衝撃!
以前から、写真を撮ることは好きだった浮遊がーるさん。
「でも自分が写真に映るのは苦手なので、鹿児島の素晴らしい風景を撮影しても、自分がその場所に行ったという記録を残すことができないんです。どうすれば、自分が写真に映る時も楽しくて、後で写真を見返した時も『あの時は楽しかったなあ』と思い出せる写真が撮れるんだろう…とずっと考えていました」
そんな時、インスタで偶然目にしたのがこの写真。
美しい風景を眺めながら、ふわりと浮いている瞬間を捉えた「浮遊人」さんの写真でした。
(Instagram⇨zgravity00)
「よく見たら浮いてるし、高い所からどんな風に撮ってるんだろう?と不思議に思ったんです。しかも、写真はカメラ目線じゃないとダメとか、ピースをしたり、笑顔を作らないといけないと思ってたけど、もっと自由でいいんだ。そう気づいて写真の概念が変わりました」
浮くだけなら自分にもできそう、と2016年の春、薩摩川内市の藤川天神で初挑戦。
確かに浮いてます…。でも思い描いていた写真は全く撮れなかったそう。
「浮くだけで精一杯でした。でも撮っている最中、顔がニヤニヤするほど楽しくて、また挑戦したくなったんです」
風景に溶け込んで、ふわり!
「美しい風景の中に自分がいた記憶として、楽しんで撮影できるのが浮遊写真」と気づいた浮遊がーるさん。
一眼レフカメラと三脚を持って出かけては、浮遊写真を撮ることが楽しみになりました。
少しずつ浮くコツをつかむ中、心がけたのは自分も風景の中の一部になること。
「観光名所に限らず、この風景をみんなに見てもらいたいと思った所で写真を撮るんですが、私はあくまでも風景の中のスパイス。『この風景はどこだろう? 風景もきれいだけど、この人も気になる!』と何かしら人の心を動かせる写真を撮りたいと思うようになりました」
50回浮いて納得の一枚を撮影
「例えば、この写真もそうなんです」と浮遊がーるさんが見せてくれたのは、姶良市のとある場所で撮影した浮遊写真。
「美しいカイコウズの大木を見た瞬間、絵に描きたくなる風景だなと思って、絵描きさんになって絵を描いている作品にしました」
撮影は基本的に一人で行うので、セルフタイマーをセットしては撮影ポイントまで急いで走って浮く、の繰り返し。
しかも合成や加工は一切しないため、この写真を撮るのに50回も挑戦したというんですから驚きです!
「絵を見ている顔や手の角度はこうかな?足はどうすれば自然かな?と手足の動きに集中して浮くんですが、連写のタイミングが合わないとうまく撮れません。でもこの日は途中から近くにいた方がシャッターを押してくださったし、何十回と浮くのも楽しんでやっているので全然苦じゃないんです」
一番の褒め言葉は「面白いね!」
独特の感性とユーモア溢れる写真は次第に話題になり、浮遊撮影を始めて2年目には依頼を受けて個展を開催。
「初めて個展を開いた時、2週間で200人の方が来てくださったんですが、見た方から『ありがとう、癒やされた』と言われてびっくり。私は好きで撮ってるだけで誰かの癒やしになるなんて思ってもいなかったので、すごく嬉しかったです」
そんな浮遊がーるさんにとって、一番の褒め言葉は「面白いね」。
「元々はひょうきんな性格で楽しいことを考えるのが好き。だから『きれいな写真だね』と言われるより『面白いね』と言われる方が嬉しいんです」
浮遊写真を撮影するうちに、いつしか写真へのコンプレックスを克服し、今では「浮遊が私のピース写真」と言えるようになった浮遊がーるさん。ようやく見つけた趣味を楽しんでいるからこそ、写真を見たこちらまで笑顔になり、ほんわか心が温まるんでしょうね。
さて、お話をうかがっているうち、嬉しいことに撮影に同行できることになりました。
果たしてどんな浮遊写真が撮れたのか、そのあたりはまた次回!