頭の上に大きな生花のアレンジメントをまとい、微笑む女性。この写真のモデルこそ、今回の主人公、湯浅あい子さん(32歳)です。
札幌で生まれ育ち、会社勤めをしていたあい子さんが地元・札幌を拠点とするフローリストチームの「HANANINGEN(花人間)プロジェクト」を知り、体験したのは7年前のこと。
「紫陽花が好きというくらいで、特別花が好きだったわけではないんです。ただフェイスブックで偶然見つけた『花人間』の写真を見た時、すごく素敵で『自分も撮ってもらいたいな』と誕生日の記念に体験したのが始まりでした」
「花屋さんで見るお花も綺麗なんですが、頭に飾り、自分と一体化すると、お花がさらに魅力的になるんだとびっくりしたんです」
そう話すあい子さんはこれまでに10回以上も「花人間」を体験。
ある時は小悪魔的に…。
ある時は妖艶な表情を浮かべ、まるで別人のよう。どの写真も思わず見入ってしまうほど、不思議な世界が広がっています。
こうした写真を見ていると、あい子さんは元々自分を表現するのが上手だったに違いない、と思いがちですが、こちらが普段のあい子さん。
「実は私、写真に撮られるのが大の苦手でスマホで自撮りすることもなかったんです。でもスタジオで花と一緒に撮影してもらったら『私ってこんな表情ができて、こんなに笑えるんだ』と写真の中の自分の表情にびっくりしました。しかも『人って変われるんだ』と実感できて自分に自信を持てるようになったんです」
花本来の力、そして花を頭に生けるフラワーアーティストのおかげで自分を好きになれたー。
花人間の可能性に心惹かれたあい子さんは、いつしか自分もこの仕事に携わりたいと思い始めたそう。
2年前にパートナーの転勤で鹿児島に移住した後、昨年12月に「HANANINGEN」のフラワーアーティストの講習を受け、ライセンスを取得。そして今年4月、鹿児島市下伊敷に花屋&撮影スタジオの店舗を構えました。
「たまたま昨年の秋に鹿児島市が主催する街なかリノベーション実践セミナーに参加して事業計画まで立てたら、『鹿児島にはないビジネスだから行動に移した方がいいよ』とみんなに背中を押してもらって。物件探しもサポートしてもらったおかげで、トントン拍子でオープンにこぎ着けられました」
「花人間」で特別な一日に!
こうして鹿児島初、花人間を体験・撮影できるスポットとして誕生したのが「HANANINGEN KAGOSHIMA GARDEN」。
入り口付近は花屋。
店舗奥のスペースに花と一緒に撮影できるスタジオが併設されています。
この日、やってきたのはアパレル業界で働く中原美咲さん。インスタで花人間を体験できるお店が鹿児島にできたことを知り、26歳の誕生日に体験を申し込みました。
「花屋さんで働いていたこともあってお花が大好きなんですが、自分の頭にお花を装飾するって普段できないことじゃないですか。せっかく体験するんだったら誕生日という特別な日がいいなと思ったんです」と中原さん。衣装に着替えたら、いよいよスタートです。
瞬く間に物語の主人公!
花人間の主なプランは2種類。ブーケのように頭の一部に花を生けるHANANINGENプラン25,000円と、頭全体に花を生けるARTプラン35,000円があります(2カットのデータ付きで、7月末まで各プランとも5200円引き)。
「大好きなグリーン系の花を使ってナチュラルなイメージを大切にしながら、ダイナミックに生けてもらいたい」と中原さんが選んだのはARTプラン。
生花のみずみずしさを損なわずに撮影できるよう、アレンジは時間との勝負。
あい子さんは花で頭の部分が重くなっていくのを絶えず気遣いながら、中原さんにぴったりのアレンジを創り上げていきます。
約20分で仕上げると、すぐに撮影開始。
「この表情、すごくナチュラルでいいよ!」
「この写真も優しい雰囲気だね」
撮影の合間にはモニターで一緒に確認しながら、和気あいあいと撮影が続きます。
特別な一枚が明日の元気になる
こうして約30分で撮影を終了すると、モデルの中原さん自身が写真データを確認。
迷いに迷った末、中原さんが選んだベストショットがこちらです。
なんとも艶やか!
「アーティスティックに撮ってもらいたい」というリクエスト通り、花と中原さんの表情が見事に調和しています。
「誕生日に自分のしたいことに挑戦できて最高の一日になりました。すっごく楽しかった!」と大満足の中原さん。そんな笑顔に出会うたび、あい子さんは思い切って起業してよかった、と実感するそう。
「花人間は札幌発祥なので札幌では結構有名なんですが、鹿児島ではほとんど知られていません。だから花人間に挑戦してみようと思うこと自体すごいことだと思うんです。違う自分に出会ってみたい。自分を表現したい。きっかけは何でもいいので、お花も自分のことも好きになってもらえたら嬉しいです」
「コロナ禍で家に閉じこもりがちな毎日だからこそ、花と一緒に写真を撮ることで明日も頑張ろうと思ってほしい」とも話すあい子さん。
現在、花人間のライセンスを持ち、国内外で活躍するフラワーアーティストは30人弱。その一人として、あい子さんの鹿児島での挑戦は今始まったばかりです。