しばらく自粛していたリアル取材を６月から再開。まず出かけたのは鹿児島市郡元にある「芸術と癒しの森。尊 mikoto 」です。
店主の小牟田 美和子さんは、子どもが同じ幼稚園で、一緒に役員をした時からの付き合い。「人と人とがつながり合える場所を作りたい」と３年前、手作り雑貨の委託販売とコミュニティーカフェを融合させたお店をオープンさせました。彼女の飾らない人柄に惹かれて、わずか９坪のお店に「ただいま〜！」とお客さんが次々に訪ねてきます。
「高校時代は女子ソフトボール部のマネージャーに応援団、働き始めてからは職場のソフトボール部のマネージャー。ずっと誰かを応援したり、居心地のいい雰囲気を作ったりすることが大好きだったんです。だから、このお店もハンドメイドの作家さんを応援しながら、素敵な作品との出会いを通して一人でも多くの方に元気になってもらいたくて始めました。でもまあ、商売のやり方も分からないまま始めたので、３年たってもひよっ子なんですけどね…」
そう謙遜しますが、お店の運営スタイルは随所に小牟田さんらしさが溢れています。
例えば、委託販売契約を結んでいる７人の作家一人ひとりに、月１回、店での打ち合わせをお願いしているのもその一つ。
「作品は作家さんにとって自分の子どもと同じ。不思議なことに、作家の方の作品への思いが薄くなると、作品が売れなくなるんです。きっと作家の思いが届かなくなるんでしょうね。だから『作品は置きっ放しではなく、お店に来て手を触れ、話しかけてほしい』と伝えてます」
作品の持つ力を高める一方で、誰もが気軽に集えるよう、月の半分は店内でさまざまなジャンルの講座も実施してきました。
そんな人と人とのコミュニティーを誰よりも大切にして小牟田さんだけに、４月からの休業期間中はさぞ不安だったはず。
そう思って聞いてみると…。
「１カ月の休業期間中、
めっちゃ忙しかったんです！」
意外な答えが返ってきました。
鹿児島県に緊急事態宣言が出される前の４月11日から１カ月もの間、店を閉めた小牟田さん。
「若い方から年配の方までいろんな方がお店にいらっしゃるので、このお店を感染源にしてはいけない。その一心でした。でもその一方で、休業中に何かできることはないかな？と考えた時、当時はまだまだマスク不足だったんです。そこで『手作りマスクのオーダーを受け付けますよ』とSNSで案内したら、オーダーがどんどん入っちゃって！ 作家さんにマスクを作ってもらっては発送するという作業をしていたら、めっちゃ忙しかったんです」
マスクだけではありません。
新たに商品化したのが「元気が出るアマビエちゃんcoffee」と「笑顔になる笑祭こーひー」（各200円）。店で提供していたコーヒーが好評だったことから、外出自粛で自宅で頑張っている人たちをコーヒーで応援できれば、とパッケージデザインを娘の祭さんと考案しました。
ネットで販売を始めてみると「これまた300個以上注文が入って、すごく売れたんです！」と小牟田さんもびっくり。
withコロナの時代だからこそ
会って元気になれる空間も大切
「与えられた場所で自分のできることを全力でやればいい」と休業期間を慌ただしく過ごした後、５月12日にお店を再開。２カ月以上自粛していたイベントも６月９日から始めました。
「３密」を避けるため、以前より定員を減らし、風通しに心がけ、マスク着用や消毒も徹底しています。
街ではソーシャルディスタンスが求められ、オンライン講座が徐々に広がりつつあります。
「もちろん、そのやり方もあるんですが、でも…」と小牟田さん。
「私のお店は、お店で直接会って話すことで癒やされ、元気になれる場所。だから、これからもオンライン講座では得られない空気感を大切したいんです。もちろん、コロナとの付き合い方は模索中ですが、３密対策を徹底しながら今できることを続けていきたいと思います」
これからは新型コロナウイルスと共に生きる「withコロナ」の時代。
オンラインで会議や打ち合わせができ、今まで会わなければ無理と思い込んでいたことが意外にそうではなかった、と気づけたのはすごくいいこと。
でも、空気の匂いや温度、その場の高揚感を感じられることのありがたさも分かった今、全てをオンラインやリモートに移行するのではなく、リアルなつながりも大切にしたい…。
私もそう思います。
「もちろん、第２波、第３波が来たら、速やかにお店を閉めますよ」とさらっと話す小牟田さん。
休業期間をしなやかに、そしてたくましく過ごしたからこその言葉を聞いて、私も彼女のしなやかさ、真似したくなりました。